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2023年11月26日(日)

ただいま半農半X生活。 白波瀬浩幸(京都大学医学部附属病院/しらはせ農園)

 半農半X(はんのうはんエックス)は、農業と何かを組みわせたライフスタイルで、僕の場合はX=臨床検査技師となる。もともと京都府綾部市出身の塩見直紀氏が1990年代後半ごろから提唱し始めたものである。(本題には関係ないが、塩見さんと京臨技の滝本寿史理事は同級生!)

 2022年3月に定年退職して、いままで兼業農家であったものをもう少し農業比率を高めていこうとしていて、自宅の裏の耕作放棄地を新たに購入、開拓して果樹栽培を始めた。

白矢印:自宅、黄矢印:果樹栽培始めた土地

 

 耕作放棄地の開拓は、想像以上に大変で、いきなり土地を購入したことを後悔するところから始まる。「後悔先に立たず」なのである。テレビ番組『ザ!鉄腕!DASH!!』のDASH村のノリで荒地を自らの手で農地に変えていく作業からはじめた。まずは草を刈り、木を伐り、木の根っこを掘って取り除き、大きい石もコツコツと集めて取り除き、壊れた小屋の残骸を片付ける。そのあとトラクターで浅く耕して、ゴロゴロ出てくる石を拾い集めて一輪車に載せて何度も敷地の端っこに運ぶ。そして再度トラクターで耕運して、また石を拾う。それから畝を立てて植える苗の区画を作る。その次は金網の防獣フェンスを張り巡らし、その上に電気柵を取り付けて、なんとなく農園の見映えとなった。荒地の開拓を始めた頃に、自宅庭から農地まで最短距離で渡れるように橋も取り付けた。

 土地を開拓して農園に

 自宅庭から農地へ渡る橋(2022年夏)

 

 コメ作りは40代からやってるけど、果樹栽培はまったくの素人。師匠はYouTube なので、うまくいくかどうかは知らんけど。植えた苗は主に葡萄で、藤稔、シナノスマイル、シャインマスカットの3品種。ラズベリーとブルーベリー、栗の木も植え、小さい家庭菜園スペースもつくる。ちなみに、葡萄は5年後に収穫できる予定で、ラズベリーやブルーベリーは3年後くらいかと期待を寄せている。一応、1年目でもわずかに実をつけたけど、食するには実に微量で微妙である。

  上段:2023年初夏、下段:2023年秋

 

 そしてコメ作りは来年から4枚の田んぼを増やすことになった。旧実家からみえる小さな谷の7枚の田んぼはすべてを作ることになり、川合運動場の下にも2枚の田んぼがあるので合計9枚。小さい田んぼが多いので、総面積は7反くらい。ちなみに1反は10アール(1000平方メートル)。田植え準備や田植え、水の管理もたいへんではあるが、あぜ道の草刈りは、そりゃもう激務以外の何ものではないのである。稲刈りまでに5クールから6クールの草刈りをやるので、お手伝いのお申し出は大歓迎(笑)。稲刈りから乾燥、籾摺りの作業は、アウトソーシングなので、秋の作業は稲刈り後に、翌年の準備となる秋起こし、つまり肥料とアルカリ性の苦土石灰をまいて田んぼを耕運する作業となる。アルカリ成分は、稲刈り後の稲わらの腐熟を促進させて土の栄養にするため。この秋の作業が美味しいコメを作るために大事なのである。

旧実家の庭から(2023年9月)

 葡萄が販売できるようになればわずかな収益を出すこともできると期待をするのだけど、農業収支はいまのところ赤字。なんで儲からない激務の農業をやるのか。それは、自然を相手にしているとメンタルにとてもいいし、医療関係以外のひととの交流ができることや頑張った分だけ成果(=おいしいコメの収穫)として返ってくるのでやりがいがあることも農業の魅力。それから草刈りで汗をかいた後のビールが美味いことはとても大事な要素である。赤字を補填して少しは生活費も稼ぎたいので、いまの半農半X生活はとてもいい感じなのである。地方へ行くと臨床検査技師を募集しても応募者がないという悩みをきく。自然がある、ネット環境が整っている、働く職場がある、の3拍子が揃えば田舎生活も悪くないと思うんだけど、こんな暮らしはどう?

 

半農半Xの参考サイト:

塩見直樹氏ホームページ http://www.towanoe.sakura.ne.jp/xseed/

幸せ経済社会研究所ホームページ https://www.ishes.org/cases/2011/cas_id000025.html